怪談:漢和辞典    桜(櫻)はユスラウメを表す漢字   はウソ(辞典の誤り) 
おかしいことをおかしいと感じないことがおかしい 平群庵
このは記事は「桜唇外伝」をバージョンアップしたものです。→ 桜唇外伝

サクラのことをウィキペディアで調べると、語源の項で
サクラを意味する漢字『櫻』は元はユスラウメを意味する文字だった・・・中略・・・
日本にユスラウメが入ってきたのは江戸時代後期頃のため、日本では『櫻』の字はサクラに転用された。
とあります。
手元にある辞書を調べてみました。
漢語林(大修館書店)、新字源(角川書店)でも、やはり同じことが書いてあります
・・・そんなバカな、それなら中国ではサクラにどんな字を当てていたか、という疑問が湧きます。
それとも、漢字が日本へ伝わった頃の中国にはサクラが無かったので当然その文字もなかった?
それも疑わしい。
 
私が疑問に思うようなことはすでにどなたかが考えて答えを出しているのではないか、と、
 
<櫻+字源> や <櫻+ユスラウメ> で検索をかけて見ました。
検索で出てくるサイトには、
 「サクラという漢字『櫻』は中国ではユスラウメを意味する文字だった」
との記述以外に説明はなく、そのことについて、考察は一切ありません。
ただ情報を右から左へコピペしてページの肥やしにするサイトばかりでした。
 
それならば、中国ではサクラをどう書くのか、あるいは中国にはサクラがなかったのか、など疑問に思う人が一切ない、この現象は何なんでしょう。    50箇所以上のサイト巡りをして判ったことは
 
     学びて思わざれば則ち罔し(くらし)  → リンク
 
インターネットの大部分はこんなもの、と判ってはいますが役立つ情報も沢山あるので、検索はよくします。
しかし、今回ははずれでした。
振り出しに戻って、やり直し。真相を自分で調べることになりました。 
問題点

① 中国で櫻=ユスラウメなら、その当時の中国ではサクラはどう表現されていたのでしょうか。
② それとも、中国には元もとサクラが無くて当然サクラと言う漢字がなかったのでしょうか。
③ 古代中国で、櫻=ユスラウメであったという根拠は?出典は?
とにかく中国のサイトでサクラについて調べてみました。
問題点②が一番調べやすいようです。「桜」は日本漢字なので、中国サイトでは「櫻」で検索します。
結論から言うと、昔から中国にはサクラがありました。
ただし、記録の多くは食用のサクランボが成るサクラです。 櫻はユスラウメではありません。

「櫻」は中国でサクラを意味する漢字でした。
インターネットがある現代、中国のサイトで調べればすぐ判ることなのです。
中国人が「櫻」はサクラだというのに、「櫻」は中国で「ユスラウメ」を意味する漢字だなどと、平気で書いてあるサイトが日本にはあります。



ウイキペディアに書いてあったから、とか辞書に載っていたとか、言うのでしょうね。
でも、おかしいことをおかしいと感じないことがおかしいのです
知識を引用するだけで思考部分のないサイトは枚挙にいとまがありません。
ウイキペディアを見れば判ることをわざわざ引用するのであれば、そのことについて何か考察したり、関連することをその延長に記載するものですが、ただコピペしてトリビアのひけらかしに終わっています。
 
ちょっと横道、  落語の枕にするような小咄に<頼朝の髑髏>というのがあります。
「こちらは源 頼朝公のしゃれこうべ。  近う寄って御拝遂げられましょう。」
 
「ほう、頼朝公のしゃれこうべ。それはたいした物だ、拝見しましょう。・・・ん?
頼朝って人は頭がでかかったって 聞いたけど、これはまたずいぶん小さいね」
 
「これは頼朝公ご幼少の折のしゃれこうべ。」
 
(この笑話を真に受けるなら、成人した頼朝公には頭が無かったことになります)
「そんなバカな」
 
<櫻>の字は元来中国で<ユスラウメ>を指す字であった
 
(それなら、中国にはサクラを表す字は無かったことになります)
「そんなバカな」
落語の枕になるような笑い話を、まじめな話として本気で書く人々
-----おかしいことをおかしいと感じないことはやはりおかしい----------

その後、ネット上で「櫻=ユスラウメ」に疑問を投げかけた人を見つけました。(2件)
Q&Aのサイトで
『桜(櫻)」という字は中国でもサクラを意味する字だと思ってたが、漢和辞典で「桜」を調べてみると、中国では、この字はユスラウメを意味するとある・・・
また、中国では現在でもやはり「桜」という字はユスラウメなのか』
と言う内容の質問でした。
質問者も回答者も多数の辞典等の比較検討をされていましたが、辞典そのものが当てにならず、結論は曖昧のままでした。(全文はリンク先をどうぞ)→リンク

もう一件のQ&Aはウィキペディアの内容を疑う質問に回答者がウィキペディアが正しいと言って進展はありませんでした。Q&Aでは質問者よりレベルの低い人が回答者になることが多々あります。   →リンク
「日本では、桜桃をユスラウメと訓じるが、それは誤り。」と指摘しているサイトを一例だけ見つけました。
ただし、  このサイトでは<櫻=シナミザクラ>とする別の解釈になっています。      →リンク 

日本の辞典がどうであろうと、漢字の本家、中国の漢字辞典では櫻はサクラのことで、英訳も cherry とあります。
下記は中国サイト:漢典(2014年版)の櫻の項の一部です。
中国、簡字体は読みにくいので繁字体にすると判るところもあります。(上と同じ内容です)
 1.〔~花〕 a.落葉喬木,開白色或粉紅色花,結核果,紫赤色,核小,味甘,木材堅硬緻密,可做器
具; b.這種植物的花。均簡稱“櫻”,如“大山~”。
 2.〔~桃〕 a。落葉小喬木,開粉紅或白色小花,果實成熟時紅色,可食;   b.這種植物的果實。均簡稱“櫻” ,如“~唇”(喩美女的口像櫻桃那樣,嬌小而紅)。

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訳は以下のようになります。
1. 〔~花〕 a. 落葉喬木、白またはビンクの花、核果は紫赤色で核は小さく、味は甘い、木材は硬く緻密、器具を作ることができる;
b.この種の植物の花。 いずれも“櫻”と称して、“大山~”のように。
2. 〔~桃〕 a。 落葉小喬木、ピンクあるいは白色小花を開き、果実は成熟時赤色、可食; b. この種の植物の果実。 いずれも“櫻”と称して、“如~脣”のように (サクランボのように、赤く小さくかわいい美女の口の喩え)。
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上の説明ではサクラのことかユスラウメのことかは区別できないと言う人でも、English の項で cherry,
cherry blossom
となっていては “櫻”という漢字が中国ではサクランボやサクラの花を意味することを認めざるを得ません。
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この中国の辞典は、花を見るサクラとサクランボの成るサクラを性格の違うサクラとして捉えています。
樹木の大きさに注目すると、
桜花:落葉喬木→この記述はソメイヨシノなど日本にあるような大型の木に当てはまります。
桜桃:落葉小喬木→サクランボの木は日本にあるような普通の桜より小振りなのでこの記述はサクランボの木に合致します。
ユスラウメは通常、小喬木の大きさにもならない灌木です。

木の大きさはこの後の漢詩の解釈で重要となってきます。
ユスラウメは家庭で植えれば2m程、広い豊かな土地なら高さ3mを少し越える程にはなります。
中国の辞書には「櫻」という字がサクラまたはサクランボの木をを意味すると書いあるりますが、
「櫻」という字がユスラウメを意味するとはどこにも書いていません。

ただ、この辞典は現代中国の漢字の意味なので、『現代の中国では「櫻」という字はサクランボ か サクラを表すが、かつての中国では (どれほど昔なのかは不明ですが) 櫻桃や含桃という言葉はユスラウメを指した』と反論があるかもしれません。
特に、漢字に関するサイトや漢籍を得意とする人々にその傾向が強いのも不思議です。

以下 漢字、漢籍系を含むそのようなサイトのさわりを紹介します。
                                       ☆
国語研の窓 文字さんぽ  さくら      → リンク
『桜(櫻)」の字を漢和辞典で引いてみると,一番初めに「ゆすらうめ」(桜桃)という意味が出てきます。「さくら」は,漢字が持つ本来の意味(古典中国語での意味)とは違って日本だけで通用する意味(国訓)として,「ゆすらうめ」の次に出てきます。つまり,古い時代の中国語では,「桜(櫻)」の字はユスラウメを表す文字で,わたしたちが親しんでいるあのサクラを表す文字ではないのです。』   
                   ☆
漢字/漢和/語源辞典             →リンク
「桜/櫻」という漢字
①「ゆすらうめ(別名:ゆすら、桜桃)(バラ科の落葉低木。葉に先立って白色の五つの花びらを持つ花を開き、 その後、サクランボに似た赤い小さな実をつける)」
日本のみで用いられる意味  ②「さくら」
                                     ☆
桜の会     さくらの語源 櫻と桜    →リンク
櫻と桜 さくらの語源
中国では漢字の「櫻」は日本の「さくら」ではなくバラ科の落葉高木「ユスラウメ」の木をいう。
                                     ☆
桜・さくら・サクラ・櫻・・・桜のミニ知識    →リンク
「櫻」・・・日本と中国では意味が違う
 上記の園芸大百科事典では「サクラ」とカナ書きでしたが、櫻(桜の旧字体)という漢字、もちろん中国生まれの文字です。ところが当時の中国には、日本で言う「サクラ」はなかったとのこと、櫻はバラ科のユスラウメ(桜桃)を指した文字だそうです。しかし、日本では櫻を「サクラ」と読み、今日までユスラウメでなく「サクラ」を意味して使っています。同じ漢字でも中国と日本では意味が異なるものもあるんですね。
                                     ☆
千葉寺子屋 - 千葉県漢詩連盟       →リンク (サイト内をユスラウメで検索)
鷲野翔堂  漢詩のやさしい造り方
サクラ:中国にはなく日本固有の植物です。漢字の「桜」はユスラウメという梅です。 
                                     ☆
みやと探す・作品に書きたい四季の言葉   →リンク
 中国には日本で言う「桜」は詩歌には詠われていません。中国詩に「桜」字は用いられていますが、指す植物は私たちの知るサクラではなくユスラウメであり、中国の文学において「桜(ユスラウメ)」は梅や桃、梨ほども詩には採られません。中国の漢詩を手本に日本の漢詩が作られたのはもちろんのことですが、桜を漢詩に詠むのは日本人独自の営みです。
                                     ☆
2013年の投稿詩5 - 漢詩を創ろう   質問に対する答え   →リンク (サイト内をゆすらうめで検索) 
 起句の「桜花」はご指摘のように、中国語で「さくら」を表す言葉です。しかし、それは現代の話で、中国古典、漢詩では「ゆすらうめ」となります。
 石川忠久先生の『漢詩のこころ』(1980年 時事通信社)では、次のように書かれています。

 「桜」は、中国では「ゆすらうめ」を意味する。花は白く、実が赤い。「桜桃」だと、「さくらんぼ」になる。また「桜唇」というと、赤くてかわいらしい唇の意味になる。
 日本では、この字を「さくら」に当てた。さくらは、中国に元来ない。同じ字でも、中国と日本では指すものが違うのである。もっとも、現代ではもう中国でもさくらの花を知っていて、さくらを指して「桜花」という。
 だから、「さくら」を「桜」と書いてはだめだ、と言うわけではなく、中国古典詩では「さくら」は存在しないことを知った上で、日本独自の詩として書いたり読んだりすれば良いということです。
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漢詩を作る人達や中国文化に強いのではないかと思われる漢字を扱う人達が、「さくらは、中国に元来ない」とまで決めつけるのはなぜでしょう。 
図書館へ行って大きな辞典を見ると、上記の漢籍を得意とする人々のこだわりの元となるような解説を見つけました。
字通   櫻 字統   櫻
上に引用したのは、白川 静 著の「字通」と字統」の櫻の部分です。
「字通では 〔桜花〕 ゆすらうめの花、 〔桜桃〕 ゆすらうめ、また、さくらんぼ。

字統では 櫻 果樹のゆすらうめをいう。含桃、桜桃、我が国では毛桜桃というもの
   中国の詩文にみえる桜花・桜樹はすべてこのゆすらうめのことで、・・
   含桃、桜桃、我が国では毛桜桃というもの・・・・・(毛桜桃はユスラウメ、中国でもユスラウメ)

 「櫻」という字がユスラウメなら、サクラは中国でどう書いたかは述べられていません。

大言海  大槻 文彦/著     
さくら
櫻(アウ)ノ字ハ櫻桃(ユスラウメ)ノ事ニテ、さくらニハアラネド、慣用セラレテアルナリ、然レドモ、支那ニテモ、日本の用字ニ引入レラレタルガ如シ、出典ノ詩ヲ見ヨ    -----中略----
此樹、日本ノ特産ニシテ、諸外國ニアルヲ見ズ、實ニ、國華ナリ。----以下略
とあります。

「支那ニテモ、日本の用字ニ引入レラレタル」というのは、日本で櫻をサクラの意味で使っているのを中国でも取り入れたということです。中国の詩人が「櫻=サクラの意味」で用いたのは日本をまねたというのです。
最初から中国では「櫻=サクラの意味」なのに、中国にはサクラがないと決めつけておいて、詩中に櫻=サクラと読める表現を発見したので、日本をまねたと解釈するのは手が込んでいます。

「出典ノ詩ヲ見ヨ」という詩のが後の方にあって

宋景濂、櫻詩
<賞櫻日本盛於唐、如被牡丹兼海裳、恐是趙昌所難畫、春風纔起雪吹香>
訳詩  日本の花見は唐で牡丹と海棠を合わせるほどの盛況さだ
     春風が起こす花吹雪を、あの趙昌でさえ描き難しと恐れよう
※趙昌:花果の描写に優れた北宋の画家 

辞典によって異なる内容

辞典類の中には櫻=ユスラウメではなく
櫻=シナミザクラ 櫻=カラミザクラ 櫻=ミザクラ などの一品種のサクラに固定しているものもありました。
これらは、支那実桜    唐実桜      実桜   の意味が込められたネーミングと思われます。
ただ、そのように書きながらも、「櫻=ユスラウメという意味づけを誤用」とまでは言っていません。

漢和辞典では三省堂だけがユスラウメという意味づけを誤用として、櫻=さくら になっています。
  (気づいたものだけなので他にもまっとうな辞典があるかもしれません)

インターネットを通じ、中国のサイトを巡って調べた結果、中国にはサクラがありますし、過去にもありました。
そして中国では「櫻」がユスラウメであったという事実は、、私には発見できませんでした。たぶん中国人も知らないと思います。
一方で桜はその起源を巡っていろんな人が発言しています。韓国が起源だ、中国が起源だ。
そう言うと誰かにとって名誉なことと思うのでしょうか。愛国的と感じるのでしょうか。
発言者と桜との間には何の関わり合いもないと思われるのですが。

例えば、ごく普通の人の意見でしょう。
留学生のブログ > 桜 2016/4/8 の一部ですが     →リンク  
桜に関する歴史を遡ってみると、桜の原産地はヒマラヤの近郊と考えられており、もともとは日本本土の植物ではありません。 また、野生の桜は世界中に約150種類あり、中国にはその中の50種類があります。そして野生の桜のうち33種類の原産地は中国です。
中国の文献史料によれば、桜に関する記録は二千年前の秦漢時期まで遡ることができます。その当時、桜は宮廷の中の花として栽培されていましたが、唐代には普通の庭園の中に植えられていました。遣唐使によって、唐代の建築様式や服飾、茶道、剣道などの文化とともに、桜も日本に持ち帰られ、それから千年以上が経ちました。千年の間に桜は日本で改良され、今では日本人にとって最も美しい花となり、咲いて人々の心を奪う、日本を代表する花となりました。

この留学生もまたサクラのお国自慢を書いていますが、背景には中国国内でのサクラ中国起源説をかじった経験があるからでしょう。サクラはヒマラヤの山麓から発して日本まで広まったと。
中国の文化と共にサクラも日本が中国から取り入れたことになっています。 
遣唐使によって持ち帰られたサクラもあった可能性は否定しませんが、生物学的にはサクラ類のいくつかの種は何百万年もかけてヒマラヤの麓から日本の方に伝播したというのが自然の営みでしょう。人類がいなかった太古のことです。
壮大な歴史観の延長には人類そのものの起源もあります。
人類はアフリカで誕生したと考えられており、もともと中国には人はいませんでした。人類はアフリカから諸々の道具や文化とともに移動し、中国にもやって来ました。中国の歴史を語るなら、まず、アフリカからもたらされた恵みのおかげで今の中国の繁栄がある。
とアフリカの人が中国のサイトに書いたら、この留学生は納得するでしょうか。大きなお世話だと思うでしょうか
----ちょっと、無駄話でした。----

中国の古代史にサクラはどのように登場するか
日本では比較的多くの辞典や漢籍を得意とする人々の間で、古代中国において「櫻」という文字はユスラウメを表している、ということになっています。
実際、中国ではどのようになっているでしょう。
中国のサイトで調べると、出典を明らかにしている所もあって、遡ってさらに詳しく調べることができます。
長い歴史の国、さすが中国です。過去に書かれたものを大切にしています。
残念なことに、日本では
「サクラという漢字『櫻』は中国ではユスラウメを意味する文字だった」
このことについての有益な出典を示しているサイトはほぼありません(見つかりません)。
さすがに『ウィキペディア』は出典を示していましたが、出典先は “文字さんぽ”. 国立国語研究所 で、
そこでは、----「桜(櫻)」の字を漢和辞典で引いてみると----
となっていて国語研究所と言いながら、辞典丸写しで国語の研究の跡が見られません。
辞典そのものが当てにならない事物の真偽を調べるための資料にはなりえません。

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さて、中国のサイト、はどうでしょう。例えば中国の『ウィキペディア』=維基百科,
       →リンク (Wikiwand版)
櫻桃或櫻,又名車厘子、楔荊桃[1]、荊桃[2]、崖蜜[1][3]、鶯桃[4]、含桃[2][4][5]、櫻珠[6]、朱櫻[7]、
紫櫻[6]、蠟櫻[6]、梅桃、樂桃、表桃等,是某些李屬植物的統稱,包括櫻桃亞屬(Lithocerasus)、
酸櫻桃亞屬(Cerasus)、桂櫻亞屬(Laurocerasus)等。

    すごく沢山の別名があって驚きです。時代の長さ×地域の広さ=表現の多様さでしょうか
    [ ]数字にはリンク先のサイトで出典等を示す吹き出しが付いてます。
經濟及文化價值
本類植物的花稱為櫻花,但部份物種果實味道欠佳而不作食用,一般作為為觀賞種,果實一般不做食用,
有時為方便區分,把用作食用品種的果實稱為櫻桃,粵語中叫做「車厘子」,音譯自其英語名複數
「cherries」。而非食用品種的果實稱為櫻花果。但實際上兩者同屬。後來還出現些其實不結實的雜交觀賞用櫻花品種,相對如果刻意哉培的櫻桃果樹的花也有人叫櫻桃花,以別於觀賞用櫻花。

(訳)
本類の植物の花は桜花と呼ばれていますが、果実が不味くて食用にならない種もあります。一般的には観賞用種の果実は食用にならず、時には簡単に区別して、食用種の果実を桜桃と呼び、広東語では「車厘子」と呼びます。英語名の複数形「cherries」の音訳です。実を付けない交雑の觀賞用櫻花品種も出てきて、そのようなことに対応して、果実用に栽培している桜桃果樹の花を桜桃花、観賞用のは桜花とと呼びます。
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   サクラの花とサクランボが成る木の花とをて区別して言うなら、
   観賞用: 桜と桜花 、 食料用: 桜桃と桜桃花  と言うことです
   Cherriesの音訳 『車厘子』は面白いですね。 日本だとカタカナで『チェリー』とする所でしょう。
日本のウィキペディアにあった『中国では櫻はユスラウメを表す字であった』という記述は
中国のウィキペディアではは見あたりませんでした。
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中国杏和樱桃的栽培史略    → リンク
(中国科学院自然科学史研究所,北京 100190) 罗桂环

アンズとサクランボの栽培史の記事を見つけました。その中からサクランボ(樱桃)の部分を紹介します。

樱桃(Cerasus pseudocerasus)也叫莺桃、玉桃和梅桃,古代也叫含桃。
因其果实颜色鲜红,也被称作朱樱,属蔷薇科。
它的名称与桃发生联系,据宋代寇宗奭在《本草衍义》中的解释是: “以其形肖桃,故曰樱桃”。(注1)
它是落叶灌木或小乔木。春季开白色或略带红色的花;圆球形的果实,颜色鲜红,绚丽美观
(注1) 古代的桃显然是一种比较重要的果树。以于一些呈圆形的果实都称泛为“x桃”,如樱桃、胡扁桃、猕猴桃等等。


桜桃(Cerasus pseudocerasus)は莺桃、玉桃、梅桃、古代には含桃とも呼ばれた。
その果実が鮮紅色なので朱櫻とも呼ばれ、バラ科に属する。
その名称に桃と付くのは、宋の寇宗奭が「本草衍義」の中で、“実が桃の形なので桜桃”と説明。(
それは落葉灌木或いは小喬木である。春に白または紅色を帯びた花を咲かせ、丸い果実は赤く鮮やかで、美しい。
()古代、桃は重要な果樹で、円形の果実に対しても「X桃」という名付け方をした。
例えば樱桃(サクランボ)、胡扁桃(ハタンキョウ)、猕猴桃(キウイフツーツ)等等。

(これ以降は訳のみ記します)

桜桃は我が国の古代の人々に愛された古くからある果樹であり、同時に落葉の果樹の中で熟れる季節が最も早いもののひとつで、果物がただ美しいだけでなく、栄養も豊富で、長期にわたって黄河流域の人々に愛されてきた。桜桃の栽培は比較的早かったと思われ、わが国の河北省にある城台西の商代遺跡では桜桃の種子が出土している。 [31

1965年、我が国の考古学者が発掘した湖北江陵の戦国時代の古い墓の中から桜桃の核が出土した。[32

古代の文献中で、桜桃は比較的早くから記載されている果樹である。恐らく成熟が早く、加えて丸くて赤くつやつやした形と色が好まれ、早くから供物としての用途が重視された。《吕氏春秋》中に有る:
 (原文:“仲夏之月、……天子乃以雛嘗黍,羞以含桃,先薦寢廟”
“仲夏之月、……天子は雛(ひな)を以て黍(きび)を嘗(あじわ)い、羞(そなえ)るに含桃を以てし、先づ寢廟(しんびょう)に薦(すす)む。” [33
          
ここで言う含桃は桜桃のことで、根拠は漢代の学者高诱の注で、 "桜桃は鳥が含むので含桃と言う。”
《爾雅・釋木》に“楔,荊桃”; 郭璞註:今の櫻桃と有る [34

桜桃はとても早くから異なった地方でで栽培され名前も違う。また、桜桃は司馬相如の《上林賦》中に果物として記載されている。;[35

《西京杂记》ではまた上林苑里で樱桃、含桃が栽培されていると記載[36
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                            →注釈解説ページ
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中国杏和樱桃的栽培史略の紹介は、以下省略しますが、サクランボの栽培が紀元前から行なわれていたこと、紀元前後の文献中に樱桃、含桃記述があり、先祖の廟に含桃(=樱桃)を供え物とするという文献記述を裏付けるりサクランボの核が出土するなど、樱桃、含桃が古来サクランボであった物的証拠もみつかりました。
次に、漢詩の中に現れる状況証拠を紹介します。
白居易の詩の中で桜桃花や桜樹をユスラウメとすると詩情を損なうか、ときには作者が怪我をします。

櫻桃花下歎白髮 桜桃花下 白髪を歎ず 白居易

逐處花皆好
隨年貌自衰
紅櫻滿眼日
白髮半頭時
倚樹無言久
攀條欲放遲
臨風兩堪歎
如雪復如絲
 
  訳詩
花美しくここかしこ
寄る年波の老い姿
見渡すかぎり紅桜
されど頭は半ば白
樹に寄りかかり 言葉なく
枝を引き寄せ いつまでも
風に堪えるは嘆きの髪の
雪の如く、糸の如く
 
 リンク →  白氏文集十六  櫻桃花下歎白髮
まず、題に 櫻桃花下 とありますが、灌木のユスラウメでは花の下にくつろぐほどの空間はありません。
しゃがむか寝転ぶか。
倚樹=木に寄りかかる  、ユスラウメだとヤブにもたれるようなもので、支えきれずに倒れ込む恐れがあり、危険です。
 したがって、白居易の詩中の櫻桃はサクランボの木
サクランボの木は普通のサクラほどは大きくなりませんが木陰ぐらいはできます。ユスラウメは主幹の発達した樹形を作りにくく、木陰となる懐ができるのは稀です。ユスラウメではあり得ない状況証拠となります。

樟亭雙櫻樹 樟亭の双桜樹   白居易

南館西軒兩樹櫻
春條長足夏陰
素華朱實今雖盡
碧葉風來別有情
 
  訳詩
南やかたの西軒に、二本の桜がありました
春から枝が長く伸び、夏には木陰ができました
清楚な花も朱(あけ)の実も、今はすっかり尽きたけど
青葉の風が吹いて来て、風情がありますことのほか
 リンク → 白氏文集卷二十 樟亭雙櫻樹
リンク先の解説には
【通釈】樟亭駅の南館、西の軒先に桜桃(ゆすらうめ)の樹が双つある・・・・・
としていますが、ユスラウメでは夏陰は無理です。
葉桜のように風にそよぎません。ユスラウメの葉は小さくてごわごわしているので風でガサガサし、詩情を損ねます。
ユスラウメではこんな状況になるという否定的な状況証拠となります。

☆☆☆ 後編に続く ☆☆☆

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