2014年3月   トップに戻る
桜 唇 桜唇外伝    


桜 唇 【オウシン】
美人の唇の小さく美しいさまを桜にたとえていう語。
桜唇という言葉をご存じだろうか。私はそんな文学的?表現には縁がなかったのだが、ひょんなことからこの言葉を調べることになった。

例によって、カメラで生き物を撮ろうとうろついていた日のこと。虫でも鳥でも何でもいいのだが、獲物がない日もある。
そんな日は公園に立ち寄る。住宅地の小さな公園にはたいてい周囲に桜の木が植わっているものだが、桜の木にはよく虫がつくので、幹や葉の裏をしげしげ眺める。 今日は獲物がいないなあ、とぼんやり桜の幹を見ていて気がついた。

桜の幹にはくちびるがある。それも無数に。その気になって見回すと、この木にも隣の木にも、すべての桜の木にはくちびるがある。桜のくちびる、すなわち桜唇。

家に戻ってインターネットで桜のくちびるを調べたら、幾つかのサイトにサクラの幹の写真と共に説明があった。
サクラの幹に唇のように見えるものは、幹が呼吸するところで皮目と言うものである。

皮目(ひもく):  樹木の幹・枝・根などにあり、表面のコルク層を破って割れ目状に見える構造。気孔(きこう)の代わりに空気を流通させる。皮孔。

サクラの皮目、本来ならそのように言うべきであるが、カメラの遊び人として皮目ではつまらない。ここでは桜唇と呼ぶ。
ところが、「桜唇」という熟語がすでに辞書にあり、上記の訳のわからない意味が書かれていた。これに対するツッコミは後述するとして、以下は皮目=桜唇で述べる。

桜唇はサクラの幹にいくらでもあるのだがかなり荒れている。きれいな形があるようでなかなか見つからない。沢山写真に撮ってその中から美形を選ぶ桜唇コンテストでも開いたら面白かろう、と並べてみた。


サクラの幹をしげしげ見るとこのように唇だらけ ここの写真の唇は整っている方
赤みを帯びたものや リップクリームを塗ってやりたいものもある

桜唇 桜唇 桜唇
   桜唇 人の唇の小さく美しいさまを桜にたとえていう語 
という意味が辞書には書いてある。
しかし、くちびるを桜にたとえる、とはどう喩えるのかもう一つイメージが浮かばない。 桜唇 という熟語は中国でできた言葉で中国ではサクランボのようなかわいい唇という喩えになっている。 サクランボの赤くつやつやしたかわいいイメージである。 
サクラの花びらのような、では唇のイメージにつながらない。

中国のサイトで辞書(漢典)を引くと 櫻唇

 形容女子小而红润的嘴唇 (形容女子小而紅潤的嘴唇)
 (和訳) 女子の小さくて赤くつやつやした唇の形容
 桜色、ピンク色は中国語で粉紅色であって紅色とは言わない
日本で
最初に桜唇という漢語の和訳を辞書に載せた人が、漢語の意味を調べず桜唇という字面のイメージから自分が想像する訳を書いたために、元々の漢語の意味と異なる内容となった、と推察できる。
重箱の隅といえばそれまでだが、という漢字の解説、といい、桜唇の意味といい、国文学者、漢語学者の怠慢もありそうだ。
壁紙画像提供: 来夢来人