アシナガバエ科 体長:5mm前後 平群庵昆虫写真館
”ニセ”アシナガキンバエ


金属光沢の大変美しいハエですが、体長が5mmほどでとても小さく、その気にならなければ目に留まりません。
以前、ここで『アシナガキンバエ(暫定)』としていたこの写真のものは、アシナガキンバエ(Dolichopus nitidus)とはまったく異なるハエであることが判りました。

分類上は
Dolichopodidae アシナガバエ科
   Sciapodinae ヒゲナガアシナガバエ亜科-- Chrysosoma 属---
   Dolichopodinae アシナガバエ亜科 ------ Dolichopus 属--- Dolichopus nitidus アシナガキンバエ

などであり、写真のハエはアシナガキンバエとまったく異なる種でした。よく似た紛らわしい種で細かい所が違うという場合もありますが、正真アシナガキンバエは翅脈だけでもこの写真のハエと大きな違いがあります。
一般的な Dolichopus 属の翅脈の例を頁末に載せます。
本当のアシナガキンバエDolichopus nitidusの写真ははネット上には一つもないようです。(2010年7月)
続報
ネット上のニセアシナガキンバエの問題に関してメスを入れたアーチャーン氏のその後の研究の結果、Chrysosoma 属であろうとしていたものが近縁のAmblypsilopusウデゲヒメホソアシナガバエなど
であることが判明しました。
アーチャーン氏の見立てによると下の写真のオスは
前額に多数の直立刺毛があり、脚全体が黒いので、クロアシヒメホソアシナガバエ(Amblyspilopus sp.2)
の可能性があり、右のメスは
ウデゲヒメホソアシナガバエ(Amblypsilopus sp.1)の様に見えるということです。

従って、このページの写真は同種のオスメスではないかもしれません。
先に、Chrysosoma 属の一種としていたこれらの写真ですが、それも怪しくなってしまいました。
写真の精度があまりよくないので、種の特定は放棄してアシナガバエの類と言うことにしておきます。
(2011年7月)
----色々教えてくださったアーチャーン氏に再び感謝----



オス メス
アシナガキンバエ アシナガキンバエ
アシナガキンバエ アシナガキンバエ
色調の異なるタイプもいました。
アシナガキンバエ アシナガキンバエ



真実は多数決によらない
「真実は多数決によらない」ことは十分知っていましたが、うっかりしていました。ネットの中を調べて多数のサイトにある写真と一致したので私も上の写真のハエの名に「アシナガキンバエ」を採用してしまいました。ポピュラーなもの故に深く調べなかったことがあやまちの原因です。
ネット上に本当の「アシナガキンバエ」の写真は見つからない、しかもネット上の写真は全て(多分)偽物というのも不思議ですが、そのことに気付いて問題提起してくれたのがアーチャーンさんです。
彼はネット上に登場する間違ったアシナガキンバエをその文中で「ニセアシナガキンバエ」と呼んでいますのでここの写真のハエの見出しも「ニセアシナガキンバエ」を使わせてもらいました。
真実を示してくれたアーチャーンさんに敬意と感謝を!
以下にアーチャーンさんのページと文章の一部を引用させていただきます。
”ニセ”アシナガキンバエ
http://plaza.rakuten.co.jp/Wolffia/diary/200908160000/

 「"アシナガキンバエ"」でGoogle検索すると8,000以上もヒットする。本物のアシナガキンバエが珍品らしいことを加味すると、私の分も含めてその殆ど全部が、種ばかりでなく亜科のレベルで異なる「ニセアシナガキンバエ」についての記事であろう。亜科のレベルの間違いと言うのは、例えば蝶ならば、ナミアゲハとギフチョウを間違えるのに相当する。Web上の情報には誤りが屡々含まれているのは常識だが、これ程大規模且つ大きな誤りも一寸少ないのではないだろうか。


正真アシナガキンバエが属する Dolichopus の一種の翅脈を示します。
Dolichopus
には○で示すZ型またはこれに類似する特徴的な構造が有ります。
アシナガキンバエ Dolichopus nitidus もこの写真のような翅脈を持っています。
(双翅目サイト「一寸のハエにも五分の大和魂」の情報による)
その後の調査で正真アシナガキンバエの写真をネット上で見つけました。
http://dolicho.narod.ru/Photodolichopusnitidus.html

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